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頭がずきずきする。
ラシアスが言っていることが真実だとは思いたくない。フーガがファンを殺めたなんて、嘘であってほしかった。
「自身が殺した少女を己の命と引き換えに生き返らせてほしいと、泣きながら余に言ったのだ」
「おまえが言ってることは、俺の記憶にはない!」
「貴様は偽りの記憶を信じるのだな。あやつによって、つくりかえられた記憶を」
ラシアスの視線が一瞬だけ、ルシャンに向けられた。
フーガの記憶がつくりかえられているのだとしたら、なんのためにルシャンはそんなことをしたのだろうか?
それは少女を殺した少女を憐れんだから。それとも、少年が傷ついている姿を見たくなかったから。
あの日、ルシャンが偶然村の近くにきていなかったから、フーガは彼に助けられることもなかったのかもしれない。
助けてくれたルシャンが、フーガの記憶をつくりかえたなんて信じたくなかった。
「ファンは俺を庇って死んだんだ」
「庇って死んだ、か……。まだ信じないというのか。余は貴様の記憶が間違っていると断言できるぞ」
「嘘をつくな!」
「くく、余に二度も嘘ではないと言わせるなよ」
ラシアスの両眼がかっと見開かれた。吊り上げられた口から、犬歯のようにとがった歯がのぞく。
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