1829人が本棚に入れています
本棚に追加
フーガの内心を察したのかラシアスが言った。
「余がもらった記憶は、貴様の記憶を複製したものだ。言っておくが、貴様にはなんの影響もないぞ」
……複製された記憶、か。
あの時は信じられなかったが、ラシアスがフーガの契約者だと言っていたのは、あながち嘘ではないのかもしれない。
その記憶がないのは、ルシャンに記憶がつくりかえられたせいだと思いたくはなかった。
「貴様が望むなら、複製した記憶を見せてやろう。どうする、ベルナール?」
ラシアスがフーガの青い目を見据えた。不安が一瞬、呼吸を忘れさせて心臓を激しく打つ。
本当の記憶を知りたかった。そしてファンを殺したのが、フーガなのかを確かめたかった。
それ以外にも知りたいことはある。
フーガは触手が巻きつく手を精一杯伸ばした。指先にラシアスの手がふれると、いとも簡単に触手は消えてしまった。まさか触手が消えると思っていなかったフーガは、改めて悪魔の力のすごさを知った。
「俺は……知りたい」
「ふふ、記憶を望むのか。ならば見せてやろう」
ラシアスの右手がなぐように動いた。その瞬間、フーガの目前で光が輝く。思わず目を細め、手をかざした。
最初のコメントを投稿しよう!