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「父さんと母さんのことは心配しなくていい。おまえは逃げて、生き延びろ」
リアドがネイを見ると、彼女は頷いた。
「そうよ、あなたは死んではいけないの。だから、逃げて」
父と母の言葉を受けとめるには少年はまだ若かった。彼の目から大粒の涙が溢れる。その様子を傍観するフーガは、黙って自分の姿を見つめることしかできなかった。
フーガは涙で頬を濡らしたまま、声を荒らげる。
「嫌だって言ってるだろう。逃げるなら、父さんたちも一緒じゃなきゃだめだ」
二人は同時に首を振った。それは優しい拒絶だった。息子を見据えるリアドは、悲しげな目をしていた。
「もうじきここに、あるものを奪いにあいつがくる。私はそれを渡したくない。……ああ、ネイ。おまえを闘いに巻き込んでしまってすまない。本当はフーガと一緒に、逃げてほしいんだ。いまならまだ間に合うかもしれない」
「いいのよ、リアド。もしこの日がきたら、一緒に闘うって約束したじゃない」
ネイの真剣な眼差しがリアドに向けられていた。
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