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容赦なく振るわれた剣が、少年の肩を切り裂くように思われた。
――その時。氷の壁が現れ、剣を跳ね返す。
「私のフーガを傷つけさせないわ」
「まだそんな力が残っていたのか」
男をにらむネイの側で、冷気が漂っていた。
「フーガ、いきなさい」
優しく微笑むネイに何も言わず、フーガは跳び窓の外へ出た。最後にリアデの顔を見る余裕もなかった。
この先を見届けたいと思う気持ちは叶わず、突然空間に亀裂が走った。部屋の中がひび割れて砂のように崩れていく。リアデ、ネイ、最後に男の姿が形を失って消えた。
やはりフーガの記憶にないものまで再現できないらしい。あの日、フーガが見たものに、この先の場面は含まれていないのだ。
結局、両親が何を守ろうと闘って死んだのか分からず仕舞いだった。
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