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次の場面が再現されると思っていたフーガの前に、ラシアスが現れた。
激しく吹く風が、二人の髪をなびかせる。場所は宮殿の近くに戻っていた。
「貴様の両親を殺したのは誰だ? 貴様はもう分かっているだろう」
「俺の両親を殺したのは、師匠じゃない。あの男は別人だ」
「敬愛する師匠を信じたくなるのも分かるが、それが真実だ。認めてしまえ」
フーガはラシアスをにらみつけた。
「俺はあの男が、父さんと母さんを殺すところを見てない!」
「苦し紛れの言い訳か、余には分かるぞ。あやつが貴様の両親を殺したのだ」
「黙れ!」
風がラシアスを裂こうとする。
だが、フーガの魔術が届く寸前で風は消えた。魔術が無効化されてしまったのだ。
「あやつを殺せ。貴様の師匠は、貴様から大切な人ものを奪ったのだぞ。生かしておく必要などあるか?」
呼吸が乱れ、頭がしめつけられるように痛くなった。
これ以上、ラシアスの言葉を聞きたくなかった。もし聞いてしまったら、本当にこの手でルシャンを殺してしまいそうだったからだ。
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