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髪を手ぐしで直すフーガにモモナが話しかけた。
「あの、きみに……一言だけ伝えたいことがあるんだ」
気まずそうに俯き、それきり黙り込んでしまう。しばしの沈黙の後に、顔を上げると口を開く。
「ありがとう」
「え?」
「あの時、私のことを庇ってくれたから」
朗らかに笑み、モモナが恥ずかしいのか頬を赤く染めた。もじもじすると上目遣いでフーガを見る。
フーガは礼を言われたくて彼女を助けた訳ではないが、こうして感謝されるのは悪くなかった。
「ねえ、これ地面に落ちていたけど、あんたのものなの?」
歩いてくるノエルの手に銃はなく、代わりにフーガの剣が握られている。それを手渡しすると思いきや、ノエルが空中に高く放り投げた。
剣は勢いよく落下し、フーガのつま先を数ミリ隔てて地面に刺さった。
「危ないだろう!」
「あんたに刺さってないんだからいいでしょ」
ノエルが顎を上げ、肩にかかる髪を払い除けた。
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