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「傷はもう大丈夫なんですか?」
「……自分で治したから大丈夫だ」
杖に刺された傷を心配してくれるのは嬉かった。けれど、嘘をつくしかないのでいたたまれなくなる。チェスに本当のことを話す訳にはいかないのだ。
「私はこの場にいる誰よりも、きみに感謝します」
口を閉じると、チェスが深く頭を下げた。
「俺は何も……」
「天地の剣を守ったんでしょう、ラルディア殿から聞きました」
「それは俺の力だけじゃない」
フーガ一人の力だったら、天地の剣は絶対に奪われていた。師匠のルシャンが側にいてくれたから、弱くても諦めず闘えたのだ。
それだけではない。きっとここにいるみんなの力もある。一人一人が天地の剣のために闘ってくれたから守れたのである。
それに、フーガがこの場にいる誰よりも感謝される義理などなかった。本来なら責められるべきだ。フーガは無意識のうちに唇を噛んでいた。
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