第四章 死闘、そして運命の再会

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「傷はもう大丈夫なんですか?」 「……自分で治したから大丈夫だ」 杖に刺された傷を心配してくれるのは嬉かった。けれど、嘘をつくしかないのでいたたまれなくなる。チェスに本当のことを話す訳にはいかないのだ。 「私はこの場にいる誰よりも、きみに感謝します」 口を閉じると、チェスが深く頭を下げた。 「俺は何も……」 「天地の剣を守ったんでしょう、ラルディア殿から聞きました」 「それは俺の力だけじゃない」 フーガ一人の力だったら、天地の剣は絶対に奪われていた。師匠のルシャンが側にいてくれたから、弱くても諦めず闘えたのだ。 それだけではない。きっとここにいるみんなの力もある。一人一人が天地の剣のために闘ってくれたから守れたのである。 それに、フーガがこの場にいる誰よりも感謝される義理などなかった。本来なら責められるべきだ。フーガは無意識のうちに唇を噛んでいた。
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