1829人が本棚に入れています
本棚に追加
男が片膝をついたまま、頭を下げた。
「ご無礼をお許しください。あなたがウェザー王国からの使者だったとは。今更、弁解の余地もありません」
「いえ、頭を上げてください。それより、早く彼を運んであげてください」
頷いて立ち上がった男は目配せをする。それに従い、二人の衛兵が動き門番に近づいた。
二人の衛兵が門番を持ち上げると、歩き出して門の中に入っていった。
「では、いきましょう」
男に向かってチェスは首肯し、足を踏み出そうとしてとまる。そして、ゆっくり背後をふり返った。
「護衛はもうここまでですね。学園には改めて、感謝の書状を送らせていただきます」
チェスは感謝を表すように深くお辞儀をした。
しばらく頭を下げた後、顔を上げてフーガを見つめる。チェスの顔が寂しさをこらえていた。
まさか、そんな表情をされるとは思わず驚く。
最初のコメントを投稿しよう!