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ルシャンが空を見上げると、視線をフーガに移す。
「私もそろそろいきますね」
「……そうか」
またルシャンは、弟子のフーガをおいてどこかにいってしまう。あの日、本人の承諾もなく学園に入れられた時と同じだ。
フーガは一緒にいきたいという気持ちを押し殺すしかなかった。もしルシャンがフーガといることを望んでいなかったら、彼の迷惑になってしまう。その上、一緒に連れていってほしいと頼んで拒絶されるのが怖かった。
「では、さようなら」
踵を返し、ルシャンは背を向けて歩く。
フーガは去っていく師匠の姿を見るのがつらくて目をそらした。結局、レグリアと外套のことを彼に謝りそびれてしまった。だがもう会えるか分からない、ルシャンのことで気に病む必要はないと気づく。
一人になったフーガは目を閉じ、地面から剣を抜くと、両手にあるそれぞれの武器を消した。――これでよかったんだと、自分に言い聞かせて。
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