光の賢者

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朝から降り続く雨が、王都を濡らしていた。 王都の中心にほど近い場所にありながら、そこは小高い樹木に囲まれている。そこには、光の館、闇の館と呼ばれる魔法使いたちが住まう建物が、樹木で仕切られ隣接しており、互いの魔法力が影響を及ぼさないように、それぞれの敷地を覆うように結界が常に張られていた。 光の館も闇の館も、長や賢者、現役の魔法使い及び、見習いたちが居て、それなりの大所帯だった。 長や賢者、現役の魔法使いは、自室の他に館の外に屋敷を持つことがあり、家族のいる賢者や魔法使いたちは屋敷を構えることが多い。 独身の者でも屋敷を持つことは可能だったが、生活全般を世話して貰える館を出ようとはしない者がほとんどだった。 長や賢者の私室のある棟は、別建てになっていて、現役の魔法使いでも師匠を務めるぐらいにならないと出入りを許されず、見習いは当然出入りできなかった。 光の館のその別棟の廊下を歩く若い魔法使いがいた。目的の部屋の前に来ると、緊張した面持ちで扉を叩く。すぐに入室を促す声が聞こえ、ゆっくりと扉を開いた。
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