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「どうした?」
部屋の主が優しい笑顔で出迎え訊く。
「少し、相談したいことがあるのですが」
訪問者である魔法使いが小さめの声で、控えめに答える。
「また、弟子のことか?」
「はい…」
「あのやんちゃ坊主に、また何かされたか?」
「あ、はい…」
「カルン、お前も大変だな、ま、中に入れ」
同情的な笑みを向けられ、少々、落ち込みつつ部屋の中に入り、扉を閉めた。
「まぁ、座れ。今、茶を淹れる」
「あ、あの…」
「遠慮は無用といつも言ってるんだが、お前も変わらんな」
「はぁ…」
お互い賢者同士なのだが、カルンは末席であり、純血の魔法使いでは無いために引け目を感じているのを相手は熟知している。
「私は、マロウ様とは違いますから」
「普通の民と言っても、お前も賢者なのだからもっと堂々としてればいいんだ」
「他の方々が快く思われていないのは理解しています」
「先の長が決めたことだが、長の決定には逆らえない」
「無理に従うことに意味があるとは思いません」
「相変わらず頑固だな」
マロウは苦笑しながら、カルンの前にお茶を置いた。
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