344人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうですね……あと二、三年あれば」
「だいぶ、飲み込みが早いらしいな。師匠の教え方が良いのかな」
マロウが卓の上に肘を付き顎を載せると、カルンの顔を覗き込んで、片目をつぶってみせる。
「いえ、そんなぁ…ディクトが賢いからです」
ほんのりと赤くなったカルンが謙虚に言う。
「相変わらず、照れると可愛い顔をするな」
「か、からかわないで下さいっ」
カルンが焦ってそっぽを向く。
「からかってるわけじゃない、誉めてるんだ」
「男が可愛いと言われて喜べるわけないでしょうっ」
横目で睨みつつ文句をつける。
実は自分の容姿が中性的であり、よく女性に間違われることに密な劣等意識があって、その手の冗談を苦手にしていた。
賢者になるまでは、わざと髪を短くもしていたのだが、小柄でもあることから、なかなか払拭しきれず、賢者になり証として髪を伸ばしてからは、また間違われることが増えていた。
「怒るな、悪気はない」
「わかってます」
悪気がないから、質が悪いとも言う。本気で抗議も出来ない。
最初のコメントを投稿しよう!