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カルンは気持ちを切り替えようと、目の前のお茶を飲んだ。
「とにかく、ディクトを宥めておくしかないな。フセク様の息子には、それとなく注意しておこう」
「よろしくお願いします」
カルンは頭を下げると立ち上がった。
「カルン、この後は何かあるのか?」
「いえ、何もありませんが」
「そうか、なら、久しぶりに付き合え」
と、マロウは作り付けの棚から酒の瓶を取り出した。
「新しいのが手に入ったんだ、ひとりで呑むのはつまらんからな」
「では、少しだけ」
「そう言わず、酔うまで呑んで、一時でも現実を忘れろ」
慰めるかのように言うが、その言葉を鵜呑みにはしない。
「そう言って、また二日酔いにさせる気ですか?」
「あれは面白かったな」
マロウは思い出して破顔する。
「もう二度目はありませんから」
以前も似たような口説き文句につられて杯を重ねて、翌日に支障をきたしたのだ。
それ以来、一杯以上呑まないようにしていた。
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