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「真っ当な使い方なら、そうだがな、これは魔法使いの自由を奪うには手っ取り早い。封印の術文は面倒だからな」
そう言いながら、マロウは寝台に腰かける。
「自由を奪う…?」
「カルン、お前、自分が周りからどういう目で見られているのか、意識したことがあるのか?」
「それはどういう意味ですか?」
「お前を手に入れたいと望む者は意外に多いんだぞ」
「え?…」
言われた意味が本当に解らなかった。
純血血統ではない自分が賢者になったことで、周囲から疎まれていることは解っていた。それ以前に、先の長に弟子入りしたことで生まれた妬みにも似た感情がくすぶり続けていることも。
そんな自分を遠ざけようとする事はあっても、身近に置こうとする者がいるとは考えられなかった。
「普通の民のくせに、半端な純血より魔法力を持ってるから、皆、反撃を恐れて手をこまねいているだけだ。しかもお前は警戒心が強い」
マロウが何を言っているのが解らない。ただ、危険に身を晒しているのは肌で判る。
「ほどいて下さいっ」
「そうはいかない。ここまでお前を信用させるのは大変だったんだからな」
「なっ…」
ニヤリと笑む、その瞳の奥に潜む色に恐怖を覚えた。
「せっかく手に入れたんだ、簡単に放すものか」
「私は物ではありませんっ」
「当然だ。私は人形で遊ぶ趣味は無いからな」
マロウはカルンの顎を掴むと唇を合わせた。
「んっ!」
カルンは予想外の行動に驚き、とっさにマロウの唇に歯を立てた。
「っっ…やはり一筋縄ではいかんか」
唇の血を拭い、マロウはニヤリと笑むと、カルンの上着の合わせに手を入れた。
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