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ここまでされて、気づかないわけがない。マロウの意図に、カルンは恐怖を覚え必死に身を捩って抵抗する。
「やめて下さいっ、私は女ではありませんっ」
「そうだな、だがそんなことは関係ない」
もう何を言っても無駄だと思った。しかし、諦めることは出来ない。必死に、マロウの手から逃れようと身を捩る。
「大人しくしていた方がいいと思うが」
「くっ、こんなことっ」
怒りも露に睨み上げる。
「なかなかキツい顔をするな。普段の気弱さは演技か?」
「そんなことしてないっ、離せっ」
もう言葉を繕う気も失せていた。紐が食い込むのも構わずもがく。
マロウはカルンの服を乱暴にはだけ、胸元に口づけた。全身を走る嫌悪感に更に激しくもがいた。
「嫌だっ、やめろっ」
「抵抗するのをねじ伏せるのも一興だ」
「本当に信頼してたのにっ」
「そうみたいだな」
「こんなことの為に、ずっと欺いていたのかっ」
悔しくて涙が滲む。
師匠が長を引退し、館を去ってから、誰も頼れずに孤独だったカルンに、唯一、優しい言葉をかけてくれたのがマロウだった。
先輩賢者としていろいろ相談にものってくれて、周囲の嫌がらせを目の前で糾弾してくれたこともあった。
本当に尊敬し、信頼していたのに、こんな最悪な手段で裏切られることになるとは考えてもいなかった。
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