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無理してるのバレバレですよ、桜坂さん……。
奏多が聴こえないように呟いた時、予鈴のチャイムが鳴った。 時刻は八時半。
「あっ、始まっちゃうから先行くね? 部室、鍵開けたままでいいから」
それだけ言うと、優月は部室を飛び出していった。 探偵部の部室には、奏多だけが残り、コーヒーが少しずつぬるくなってきた。
嘘でもいいから、“入る”って言ってやれば良かったか――?
頭の中で、光景が繰り返している。 繰り返されるのは、飛び出していく優月の後ろ姿と、寂しそうに滲んだ優月の瞳。
考えてみれば、たった一人で探偵部を盛り上げようと頑張ってたんだよな……。
一人で探偵部を切り盛りする優月を想像してみた。 依頼を一人でこなして、新入部員の勧誘も一人でやって……。
今さらながら、自分の言った言葉の意味を実感した。 酷いことを言った。 その想いが頭を回っていた。
その時――、
「――神崎君!」
部室のドアが勢い良く開いた。 開いたのは、優月。
「さっき言い忘れてたけど、私が異能者ってことは秘密ね。 もし言ったら――」
手を指鉄砲の形にして、奏多を指した。
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