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優月の声だ。 安心してドアノブに手をかける。
「失礼しま――」
「神崎君っ!入る気になってくれたの?」
奏多の言葉を遮ってまで出した言葉がコレ。 入って早々に、奏多は帰りたくなった。
「いや、ヒマだから見に来ただけ」
何の気無しに言ってみた言葉だったが、明らかにシュンとなった優月を見ると、罪悪感が込み上げてくる。 胸が少し痛い。
「でもまあ、来てくれただけでも嬉しい。 ゆっくりしていって。 コーヒーでも淹れるから」
パッと表情を変え、優月はテキパキとコーヒーを淹れた。
「はい、どうぞ」
「ありがと」
コーヒーを飲みながら、奏多は部室を見渡してみた。 朝は気にしていなかったが、本棚の怪しい名前の本がやたらと気になる。
「犯罪心理学」とかいかにもなタイトルの本ばかり並ぶ本棚。 どれも分厚い本ばかり。 よく読めるな、と感心してしまう。
すると、本の列の中に、見覚えのあるタイトルが眼に入った。
「シャーロック・ホームズかぁ……好きなのか?」
犯罪関係の本の中、順番通りに並ぶ小説が一際目立つ。 推理小説だ。 それも、誰もが知ってるであろう探偵、ホームズシリーズ。
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