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入ってきたのは、どうやら高等部の女生徒。 パーマのかかった茶髪が可愛らしいが、その瞳には確かな不安の色が滲み出ている。
当然、それを奏多と優月が見逃すはずも無かった。 まだ幼さの残る顔立ちの少女が抱える“闇”を、二人はまだ知らない。
これが、奏多が初めて出会った探偵部への依頼人だった――。
‡
「高等部一年の、最上遥菜(モガミ ハルナ)って言います」
「探偵部の桜坂優月です」
来客用のソファーに座り、優月と対面する形で自己紹介。 眼の前には探偵部自慢のコーヒーが淹れられている。
ホントに依頼人って来るもんなんだなぁ……。
部室の隅で、奏多はコーヒーを飲みながら思った。 と同時に、自分に向けられる遥菜の視線に気付いた。
「あの……、あっちの人も探偵部なんですか……? 綺麗で優しい女の先輩しか居ないって聞いたんですけど……」
「それ別の部だろ? ここの部員は全然優しくな――」
「かーんざーきくーん? 少し静かにしててね?」
にっこりと微笑む優月の後ろに、爪を尖らせた猫が視えた。 正確には、奏多にだけは視えた。
「すみませんでした。 桜坂さん」
汗だくの奏多を、遥菜が不思議そうに見つめる。
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