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コホン、と気を取り直して、優月は真剣な顔で遥菜に向き合う。 汗だくの奏多を放って。
「アレは気にしないで。 部室の置物かなんかだと思って良いから」
なんか……俺の扱いがヒドくなっていかない……?
「話しにくいならすぐに追い出すから安心して」
「あっ、いえ、大丈夫です。 っていうより、あの……なんか、落ち込んでるみたいなんですけど……」
「神崎君、なんで床に頭伏せてるの? そういう趣味あったの? ご愁傷様」
「お前のせいで落ち込んでんだよっ!」
さて、話を戻そう。
「……兄を、探してほしいんです」
そう話し出した遥菜の表情は、思い詰めた色をしている。 小さな肩が、震えているように見えた。
「お兄さんを? 詳しく話してもらえる?」
遥菜は黙って頷き、ゆっくりと、内に抱えるものを語り出す。
「私には、五つ年上の兄がいるんですけど、最近……連絡がつかなくて」
「失礼だけど、お兄さんの仕事は?」
優月が訊ねると、「職を転々としてるので……今は、銀行で働いてるって」と返ってきた。
「単に仕事が忙しいんじゃないの?」
と、口を挟む奏多。 すると、
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