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「――あなたも特異体質?」
後ろから聴こえた彼女の声は、とても澄んだ美しい声で、天使の声に思えた。
「え?」
振り返ると、夕暮れの屋上に彼女の姿があった――。
長い艶のある黒髪を風になびかせ、優しい微笑みを浮かべ、キレイな瞳で俺を見つめてた。
質問の意味がわからなかったからか、それとも、その姿が凄く綺麗だったからか、俺は一言も発することが出来ずに、ただ呆然と彼女を見つめていた。
紅い夕焼けが屋上を真っ赤に染め、心地良い風が俺と彼女の間を吹き抜ける。 耳に聴こえるのは下校する生徒たちの声、彼女の呼吸、そして高鳴る俺の鼓動。
その瞬間だけ、周囲の時間が全部止まったみたいだった。 彼女と俺以外、世界に誰も存在していないみたいに。 とても静かで、幻想的で、ドキドキしてた。
まるで――、待ち望んだ物語の開幕ベルが鳴り響いたみたいに。
それが、彼女 桜坂優月(サクラザカ ユヅキ)と、俺 神崎奏多(カンザキ カナタ)が初めて言葉を交わした時の感想だった――。
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