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腕時計を見ると、既に五時。 下校する生徒たちの声が聴こえてくる。
そっか、あの後寝ちゃったのか……。 五限も六限もサボっちゃったなぁ。 美空先生に怒られるかな。
まだ頭がはっきりしていないのか、奏多は数分ぼんやりと屋上から見える景色を見つめた。
夕焼けってなんか良い。
ふとそう思った。 朝の太陽が昇り、世界を明るく照らす朝焼けも素敵だが、夕焼けもまた良い。
「………………」
明るい昼の世界を、深い夜の闇に包み込み、世界を眠りに誘う夕焼け。 世界が回る為には必要な存在だ。
「……帰るかぁ」
夕焼けを眺めてるうちに、なんとなく切なくなって、奏多は立ち上がる。
教室にカバン取りに行かなきゃなぁ。
奏多が歩き出そうとした瞬間――、
「ねえ――」
女の子の声が聴こえた気がした。
「――あなたも特異体質?」
びっくりするぐらいの美少女がいた。
‡
「………………」
「………………」
声をかけた少女と声をかけられた奏多は、互いに無言のまま見つめ合っていた。
何故話しかけられたのかわからない奏多は声を発することも出来ず、少女の出方を待つしかない。
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