第1章 闇に隠れた死

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9時50分過ぎ、大学の正門に到着した。 約束の時間は10時なので、まだ少し時間がある。 大体、赤羽は時間通りに来るが、田中は少し遅れる。 時間を守れない人間はこの世に不要だ、とテレビで誰かが言ってたような気がする。 しかし田中は許せる。それが彼の持ち味なのだから。 5分後、駅のほうから赤羽がやってきた。 「やぁ」 「久しぶり」 赤羽が無表情で答える。 顔を見ると、まだ眠そうだ。 「あー眠いな。本読んでて、気付いたら朝になっててさ。一時間半しか寝てないよ」 「へぇーそれは気の毒だな。途中で寝るなよ」 赤羽が頷く。 「ういーす」 いつの間にか田中がそばに来ていた。 「びっくりしたぁ。来てたの?」 「いや、今来たよ。今日は気持ちの良い朝だな。見ろよこの空。雲一つもねぇじゃん」 「あぁそうだな。でも眠い」 赤羽が欠伸をする。 「眠眠打破でも飲めよ。でもあれまずいよなぁ。この前、一回飲んだけど」 田中が顔を顰めて言う。 「ジュースじゃないんだから美味しくないだろ。それよりどこ行く?」 俺が二人に聞く。 「池袋行こうか?」 「池袋?俺、昨日行ったんだけど」 「夏美ちゃんと仲良く行ったのか?ラブラブだな」 田中が俺の腰を小突く。 「まぁそうだけど。ラブラブではないかな。ラブくらいかな」 「甘いな。付き合ってるならラブラブくらいまで行かないと。まぁ俺はまず彼女自体がいないから人のこと言えないんだけどな」 田中が笑いながら言う。 「じゃあ池袋でいいか?」 田中が二人に確認する。 赤羽は、いーよーと気の抜けた返事をする。 俺も頷き、池袋に行くことが決まった。
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