カラスが鳴くから

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しまった。しくった。 馬鹿か。俺は。 どストライクに地雷ふんじまってんじゃんかよ。 ひゅう、と生暖かい風が俺とアイツの間に吹いた。 俺は見てしまった。 聞いてしまった。 勿論、ワザとじゃない。 ただ偶然、通りがかった所に2人が居たのだ。とっさに物陰に隠れはしたけどさ。 …いや、つい。ね? しょっちゅう出くわすようなイベントじゃ無いし、やっぱり聞いてしまったなら結果は気になるじゃんか? …マネージャーから言い出したのは意外だったけれどもね。主将は男の中の男のような人だから、絶対自分から言うと思ってた。 そう、あの人は男も惚れる男。 やたらとカッコイイのだ。 男女問わず、誰もが一度は憧れる人だ。 それなら、まぁ、好きになっても仕方ないかなぁ?と思う。 ちょっぴり悔しいけど。 いや、勝てる気はしないけど。 気まずい沈黙がしばらく続く。 チラリと伺うようにアイツの顔を見れば、夕日に照らされて顔が紅く染まっていた。 悲しそうな表情だったけども(そうさせたのは俺だけども)、綺麗だと思った。柄にもなく。 ずっと見てたくなるような横顔。 時が止まればいいと思った。 柄にもなく。 今日の俺はなんかセンチメンタル。 ほんと、柄にもねぇな。 連日、残暑が厳しいとニュースでひっきりなしに言っていた。その言葉のとおりべたべたと肌にへばりつくような暑い日が毎日続いている。 だがそんなうだる様な暑さの中でも、朝、家を出る時は確実に以前より涼しくなってきている。 サラリと涼しい風が吹くのだ。 つまり、どんなに異常気象であっても季節は巡る。 時が止まるなんて事は有り得ないって事を、直接肌に教えてくる。 分かってる。 分かってるさ。 季節は、夏が終われば秋。そして冬を越したら春。それからまた夏に戻ってくる。 季節は巡る。 だがそれは戻ってくるのではない。今年の夏は終わればもう来ない。来年の夏はまた新しい事が待っている。 …そう、だから、つまり、 動くなら今だろ。俺。
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