インクカートリッジ

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 レンタルして来たボーカなロイドのCDの歌詞カードを、プリンターでせっせとコピーする姉、30代。  いい歳してボカロにハマんなって…  コピー開始からまもなく、シアンのインクが残り少なくなり、更にライトシアンも。  そして何故かライトシアンが先に力尽き、コピー不可能になった。  青使い過ぎだよ、ボーカなロイドちゃん…  翌日、インクカートリッジを買いにホームセンターへ。  売り場前で腕組みの姉。  「どれだっけ?」  調べとらんのかいっ!いや、私も調べて来なかったけど!  ケータイで調べて、多分コレと思われる、純正品…ではなく、安いほうを購入。  ほぼニートの姉もだが、我が家は金銭的に余裕などない。  さっそく力尽きたライトシアンを交換。  無事、プリンターは動き出し、姉はご機嫌な様子でコピーにいそしむ。  まもなく、先に警告が出ていたシアンも、天命をまっとう。  交換する姉。  「ん?」  姉がプリンターの液晶画面を覗き込む。  「『このカートリッジは純正品ではありません。このままお使い戴くと、従来の能力を充分に発揮出来ない場合がございます。また、故障した場合、無料修理期間内であっても、有料となります。このままこのカートリッジをご使用されますか?』…さっきはこんなメッセージ出なかったのに…」  純正品は次回からということにして、コピー再開。  しかし……  「…えっ? ダメだ、コレ。」  トラブルが発生した模様。  「ぜんっぜん印刷されない! 真っ白! 充分に能力発揮出来ない場合ったって、ここまでヒドいのか?」  確かにプリンターから出てくる紙は真っ白。  何枚試しても白、白、白……  「あーっ、もぅいいっ! 今度純正品買ってくるっ!」  ほんの数分前の上機嫌はどこへやら。  ATMの手数料を取られるのさえ嫌がる姉だ。この無駄な出費は、彼女を一気に不機嫌にさせるのに充分な力を持っていた。  私としても無駄使いはしたくない。  何とかならないかとプリンターに近づいた瞬間。  「…あ。」  どうした、姉ちゃん。  「もしかして、歌詞カード入ってない?」  確認する私。  「…うん。ないね。」  インクカートリッジのせいでもプリンターの故障でもなく、壊れていたのは、姉の記憶力だった。  その後、歌詞カードは無事コピー出来ました。
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