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「なんで、俺たちをバラバラにするんだ!俺はずっと海羅といたかったんだ!
俺が施設に入ればよかったんだ!そうすれば海羅は幸せだったのに!」
海季は泣きはじめ、手の甲で涙を拭った。
「海季くん、待って。今でも、あなたたちは兄妹よ。自分をそんなに責めないで。
たとえ、もし海季くんが施設に入ったとしたら、海羅が本当に幸せだと思う?きっと、今の海季くんと同じ思いをすると思うよ」
私は海季を抱き締めて言った。
「だから、いつでも遊びにおいで」
「はい。でも、今日来たことは内緒にしてください。海羅は俺に会いたくないかもしれないし」
「海羅も会いたいはずだよ」
絶対に。
言葉には出さないけど、本当の兄妹なんだもん。
会いたいに決まってる。
「でも、言わないでください」
そんな真剣にお願いされたら…
「分かった、約束する」
そう言うしかない。
「ありがとうございます。海羅って中学はどこに行くんですか?」
「海羅は凰院の中等部にいくよ」
海季の顔は引きつり、強張った。
「凰院…。俺っ、中学そこ受験します!」
凰院の外部入試はとても難しい。
定員が少ないため、倍率はとても高くなる。
それでも妹に為、自分のために受けるというのだから関心する。
「そっか。頑張ってね!」
「もちろんです!このことも内緒にしてくださいね」
私はくすくす笑った。
きっと、海羅を驚かすつもりなんだ。
海季ならやってくれる気がする。
「分かった。頑張ってよ」
「はい!あっ、もう帰らないと。電車の時間が」
中幡家はここから1時間かかる。
「家まで送っていくよ」
「いえ、大丈夫です!駅も近くだし」
「そう?気を付けて帰ってね」
「はい、お邪魔しました」
海季は一礼して帰っていった。
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