冷たい海の底

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4月。 海羅はそのまま凰院中に進学した。 あれから海季から全く、連絡がない。 もしかしてダメだったのかな? 海季と約束したからには、海羅に聞くこともできない。 冬夜に相談したら 「そっとしておいたら?」 って。 そーなんだけどさ…、分かってるんだけど、心配って言うか。 私の心配をよそに季節は梅雨に入ろうとしていた。 海羅はバスケ部に入部して頑張ってる。 6月に入ろうとするのに、やっぱり海季からの連絡はないし、海羅からも海季に会ったと言う話は聞いていない。 やっぱり海季はダメだったのかな? 倍率高かったしからな。 うーん…。 「冬夜さん!!皐月さん!!」 海羅が学校から帰ってきてバタバタと廊下を走ってくる。 私は部屋から出て、ヒョイと顔を出した。 「海羅?どーしたの?そんなに慌てて…」 海羅は私のほうを振り向いて走ってきた。 「あのねっ、今日、海季に会ったの! 学校でね!あっ、海季って言うのは私の双子のお兄ちゃんでね、えーと、えーと、中学から凰院中に入ったんだって 。私、全然知らなくて…」 海羅は本当にうれしそうに一生懸命私に話した。 「海季くん、受かったんだ!」 「えっ?」 海羅はきょとんとしている。 しまった。と思って、口を手で覆った。 「もしかして、知ってたの?」 「うん、ごめんね。2月に海季くんが来たの。でも、海羅に内緒にしてって。黙っててごめんね」 海羅は首を横に振った。 「ううん、クラスは違うんだけど同じ学校でうれしいんだ!私、思わず海季に抱きついちゃった」 えへへって笑う海羅はホントにかわいい。 ちゃんと笑ってる。 「ははっ、海羅らしいね。今度、連れておいで」 「うん!海季、寮に入ったんだって。家から遠いからって」 「うちに住めばいいのに。そうすればまた海羅と一緒に住めるじゃない」 「私もそう言ったんだけど、寮は楽だからって」 海季なりに気を使ってるのだろう。
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