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1605年
琉球・宮古島
薩摩藩による琉球侵攻が囁かれていた頃、宮古島を所轄する蔵元では事件が起きていた。
次々と蔵元の武士たちが呪術によって殺されていたのだった。
「追い詰めたぞ!」
亜熱帯雨林の森の中で蔵元の武士である上里玄盛(うえさと げんせい)と平良松金(たいら まつかに)は山姥のような女性―大田チルメガ(おおた-)を追い詰めた。
「よくも・・・安寧(あんねい)を・・・安寧を返せぇっ!貴様らが殺したのだろう!」
玄盛と松金は顔を見合わせる。
「・・・我々は、安寧など殺してはおらん。何かの間違いだ」
「黙れぇっ!」
チルメガは呪詛を唱え始めた。
「玄盛!斬れ!」
玄盛が鞘から刀を引き抜き、チルメガに斬りかかった。
『ズバッ』
「ぐぎゃああああっ」
断末魔をあげてチルメガは玄盛に斬られた。
しかし、執念がそうさせているのか、ゆっくりと松金のところへやってきた。
「これで・・・終わったと思うなよ・・・貴様らに・・・末代まで続く呪いをかけてやるからな・・・」
松金の腕を掴むや否や、遠のく意識の中、呪詛を唱え始めた。
そして、その腕に深々と爪を食い込ませていく。
『ズバアアッ』
玄盛はチルメガの背中に留めの一撃を加え、チルメガはズルズルと松金の足元にうずくまった。
「・・・島の・・・人間に・・・呪いを・・・」
松金の足を掴み、そのまま、着物を掴みながら、チルメガは血まみれの顔を松金に向ける。
「・・・いつか・・・ミャークが・・・世界が・・・滅ぶ・・・ことを・・・願う・・・」
その憎悪にも似た執念に玄盛は思わず、構えていた刀を下ろし、足が震えだした。
「・・・そして・・・私はその・・・人柱になろうぞ・・・」
チルメガはカパッと口を開けると舌を出して思いっきり噛み切った。
その瞬間、息絶えたのか、松金の足元に倒れた。
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