予兆

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突然背後から声が聞こえ、僕は反射的に振り返る。 そこには薄色の浴衣を着た男が立っていた。歳は30くらいだろうか。男は僕を頭から足先までじっと見つめ、ゆっくりと一歩ずつ近づいてきた。 「蘇芳…お前、どうしてここに?」 …すおう? この男は誰と間違えてるのだろうか。僕は16歳でもちろん友達も同い年。30歳の知り合いなんていない。一歩ずつ近づいてくる男があまりにも真剣な顔なので、だんだん怖くなってきた。でも足が地面とくっついて一歩も動けない。 動け!動け!動けー!! 叩いても持ち上げようとしてもピクリとも動かない足。思いっきり右足を持ち上げようとしたその時、僕はバランスを崩してその場に尻餅をついてしまった。 そんなことをしている間に、男は僕の目の前に立って尻餅をついた僕を見下ろしていた。 「蘇芳、何故ここに?」 男から僕に向かって質問が投げ掛けられた。 「…あの、すおうって誰ですか?僕はひろしって言います。」 戸惑いながらも恐る恐る聞いてみる。 「ついに、この時がきてしまったのか…」 男は全て悟ったかのように1人で納得しているが、僕には何が何だか分からない。
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