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またきてる…。
高校から自宅に帰ってきた眞生は、玄関にあった見慣れた革靴を見て心を弾ませた。
「ただいま。」
だが、わざと面倒臭そうに口を開いた。
口元は緩んでいるのに。
「ま-ちゃんおかえり。」
2階から足音と共に聞こえてくる声。
少し低めでハスキーな魅力的な声。
それが眞生の楽しみでもあった。
「奏兄また来てたんだ。ひま人だね。」
素直になれない口からは可愛くない言葉しかはっせられない。
(なんで素直に言えないんだろう…。)
「ま-ちゃんは相変わらずだなぁ。」
奏兄こと奏哉は、眞生の頭をぐちゃぐちゃにした。
奏哉に触れられたところが熱を帯びたようにジンジンとした。
「も-やめてよ!」
眞生は邪険に奏哉の手を振り払い軽くにらみつけた。
「お-こわっ!」
わざとらしく奏哉は恐がってみせるとやさしく微笑んだ。
「美生が帰ってきたらすぐに出ていくから…そんなに嫌うなよ。」
(嫌ってなんて…むしろ大好きなのに…)
何も言えずに黙った眞生は、唇を噛み締めた。
「ま-ちゃん?」
眞生の表情に奏哉は心配そうに顔を近付けてきた。
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