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「それ、読んだ?貝塚陽一くん」
驚いて振り向く僕。その声は間違いなく彼女、小島沙夜子だった。
夏休み中だからか、今日の彼女は制服ではなく、真っ白のワンピースを着ている。
「なんで…」
――僕の名前を??
質問の最後まで聞くことが出来なかった。
彼女はフワリとイタズラっぽく微笑んで、
「名前?わかるよ、私、超能力あるもん」
と言った。
「ちょう……?」
僕が唖然として馬鹿みたいにポカンと口を開けていると、小島沙夜子はますます楽しそうにクスクス笑う。
「ふふ。嘘。今、学生証落としたよ」
――外に出ないのか…透きとおるような白い肌。
漆黒の瞳。
赤みがさした唇。
――ゾクゾクする。
僕は思わず、ほぼ無意識に彼女の頬に手をそえた。
彼女は少しも動じることなく、澄みきった瞳で、僕を見つめた。
しばらくの沈黙が、僕たちの心を近づけてくれるように思える。
見つめ合っていた視線を外し目を閉じた彼女は静かに口を開いた。
「不思議…」
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