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「男の人…苦手なハズなのに…なんでだろ……君は大丈夫みたい…」
そう言って、頬においた僕の手に、彼女は自分の手を重ねてくる。
「そ、それって…」
――言いかけたけど、やめた。
「え?」
僕は彼女にこたえるかわりに、ゆっくりと顔を近づける。
再び、じっと見つめてくる彼女。
なおも近づく僕の意図を察してか、目を閉じた。
柔らかくあたたかい唇の感触。
僕たちの間にある、今のこの感情は、いったい、どう表現すればいいのだろう。
説明のつかないこの気持ちは、妙に鼓動を速くし、だけど今までに感じたことのない心地良さだった。
近づくときよりもさらにゆっくりのスピードで、僕たちの唇は離れた。
僕は何も言わずに彼女に微笑む。
彼女はそれを見て、ふっと笑顔をみせて、
「覚えておいてね」
と、ぴょこんと一歩後ろに跳ね、ほんの少しはしゃいだ声で言った。
「私、小島沙夜子っていうの」
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