8人が本棚に入れています
本棚に追加
「ありがとうございました~」
店員の声を背中に、僕たちはコンビニを出た。
「送るよ」
僕は、彼女に会計を済ませた飲み物を手渡す。
「え?」
「近くなんだろ?時間も遅いし、マンションまで送る。」
すると意外にも、すごく嬉しそうに顔がほころぶ彼女。
僕は、またもドキドキさせられた。
「よかった。夜ひとりで歩くの、苦手なんだ」
と、手をつないでくる彼女は、僕を意識してないのか、とても自然だった。
「ああ、男苦手なんだったっけ?
そのわりにコンビニくる時は一人で歩いてきたのな。そんなに喉渇いてしょうがなかったのか?」
僕が思わず笑って、そう言うと、彼女は恥ずかしそうに俯く。
「イジワルなこと言うんだね。」
「はは。ごめんごめん。でも僕の手は、なんにも気にすることなく繋ぐんだ?
!!…もしかして…僕のこと女だと思ってる?」
「ふふふ。そんなわけないよ。おもしろいね、陽一くん」
僕の心配は、彼女にツボだったらしく爆笑されてしまった。
夜道は何の物音もせず、周りの家の人たちは、すっかり寝静まっていたようだった。
彼女を送ることにしてよかった、と僕は安堵する。
しばらく黙って歩く僕たち。
先に口を開いたのは彼女だった。
「陽一くんは…私にとって特別…手をつないでて、こんなに気持ちが落ち着く人、ほかにいないもの…」
「小島…」
「陽一くん………沙夜子って呼んで……?」
月の光りに照らされた彼女は、びっくりするくらい綺麗で、僕は、自分でも驚くほど無意識に、彼女を抱きしめていた。
最初のコメントを投稿しよう!