青の闇

11/38
前へ
/42ページ
次へ
「ありがとうございました~」 店員の声を背中に、僕たちはコンビニを出た。 「送るよ」 僕は、彼女に会計を済ませた飲み物を手渡す。 「え?」 「近くなんだろ?時間も遅いし、マンションまで送る。」 すると意外にも、すごく嬉しそうに顔がほころぶ彼女。 僕は、またもドキドキさせられた。 「よかった。夜ひとりで歩くの、苦手なんだ」 と、手をつないでくる彼女は、僕を意識してないのか、とても自然だった。 「ああ、男苦手なんだったっけ? そのわりにコンビニくる時は一人で歩いてきたのな。そんなに喉渇いてしょうがなかったのか?」 僕が思わず笑って、そう言うと、彼女は恥ずかしそうに俯く。 「イジワルなこと言うんだね。」 「はは。ごめんごめん。でも僕の手は、なんにも気にすることなく繋ぐんだ? !!…もしかして…僕のこと女だと思ってる?」 「ふふふ。そんなわけないよ。おもしろいね、陽一くん」 僕の心配は、彼女にツボだったらしく爆笑されてしまった。 夜道は何の物音もせず、周りの家の人たちは、すっかり寝静まっていたようだった。 彼女を送ることにしてよかった、と僕は安堵する。 しばらく黙って歩く僕たち。 先に口を開いたのは彼女だった。 「陽一くんは…私にとって特別…手をつないでて、こんなに気持ちが落ち着く人、ほかにいないもの…」 「小島…」 「陽一くん………沙夜子って呼んで……?」 月の光りに照らされた彼女は、びっくりするくらい綺麗で、僕は、自分でも驚くほど無意識に、彼女を抱きしめていた。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加