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「何…してるの?」
突然の僕の存在にも僕の質問にも驚くこともなく、女の子はチラリと僕を一瞥して、また本を見つめる。
そして、ゆっくりした口調で、
「……本のお葬式…」
と、一言。
「え?」
僕は、なにを言ったのか理解できず聞き返したが、それに彼女は答えない。
そして、スクッと立ち上がり、少しだけ微笑んだ。
「じゃあね」
スタスタと立ち去ろうとする彼女に僕はあわてて声をかける。
「あ!本は?」
「………」
彼女は立ち止まり、さっきよりもう少し笑顔で、
「君にあげる。もう読まない」
そう言って、行ってしまった。
彼女の姿が見えなくなっても僕はなんだか動けずにいた。
どう表現すればいいのか。
幽霊を見たときっていうのは、きっとこんな感覚になるんじゃないかと僕は勝手に解釈してみる。
そして勝手に納得。
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