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夏休みもあと半分になった暑い日。
僕は図書館にいた。
ここには、ジリジリと照りつける眩しい太陽の光も届かなければ、シャワシャワうるさい蝉の声も聞こえない。
僕は図書館が昔から好きだ。
ひんやりしていて、本の、少し湿ったようなカビ臭いような、でも時間の詰まったニオイがする。
この空間にいると心が落ち着いた。
集中力が切れた僕は、読んでいた本を閉じて、窓に目をやる。
濃い緑の葉が力強く光を浴び、ゆらゆらと揺れている。
そしてふと、前に出会った彼女、小島沙夜子のコトを思う。
初めて出会った翌日、僕は彼女が自分と同じ学校の制服を着ていたのを思い出し調べたのだ。
同じ高校の1年生。僕よりひとつ年下の小島沙夜子は、入学してから一度も登校していない生徒だった。
あれから一度も会えずにいる。
――今日は何を借りて帰ろうかな。
僕は、立ち上がって、ウロウロと本棚を物色することにした。
やがて、ひとつの本を前に動けなくなる僕。
《時間軸の中での命の価値観》
と、突然だれかに声をかけられた。
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