9/27
前へ
/93ページ
次へ
あれは約2年前の事… 俺は、高校受験で連れの慎吾とめでたく合格し、入学式も終わって、明くる日、少し不良ぶって駅で電車を待っていた時の事だった… 「…なぁ、あれ見てみろよ。」 慎吾に肩をこずかれ、その先に目を向けた。 「…何だあれ?」 そこには、少しブカブカのブレザーを来て、可愛いリュックを背負い大き目の靴をはいた、一見女の子にも見える前髪パッツンの男の子がいた。 「ぷっ、何だアレ?ダセぇー」 そう、ケタケタと慎吾と笑いながら見ていた。 男の子は、駅は人がいっぱいいて怖いのか、キョロキョロと回りを見渡していた。 「あいつ、ビビり過ぎじゃね?」 「だよな、どんだけ人込み苦手なんだよ。」 「間もなく、一番線に下り列車が参ります。危ないので白線の内側で――」 俺達が笑っていると、不意にアナウンスが流れた。 すると男の子は、ハッ!っとしたように走り出した。 次の瞬間、 ゴン! 「あぐっ!!」 走り出し、キョロキョロとしていた視線を前に向けた瞬間、柱にぶつかって、反動で座り込んだ。 「ぶっ…クックック」 「ぶはっはっははは」 俺と慎吾は、同時に吹き出した。 やべ、マジウケるw そのまま笑っていると、男の子は鼻血を垂らしながら、恥ずかしそうにホームへと走って消えて行った。 「…なぁ、斗雷…。」 一通り笑った所で、慎吾が声をかけて来た。 「ん?」 「あの制服…うちらの高校と反対方向にある学校だよな…」 「うん、たしかそうだった。」 「だったら…下りじゃなくて上登りじゃね?」 「ぶはっ!!確かに!」 俺は盛大に吹き出し、目茶苦茶笑った。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加