【狗獣】

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『千里』 俺がそう呟くと同時に、黒髪の少年、千里と視線がぶつかった 突然の事で体が僅かに動く 千里は目を逸らす事なく、 俺の目をじっと見据えた そして眉を下げて 小さく微笑んだ 「千里………」 「奏人さん………」 千里って 俺の名前呼んでくれた…… もう二度と、呼んでくれないだろうと思っていた 4年前のあの日から… 俺は薄く笑みを浮かべると、 す…と、奏人さんから目を逸らした。 「お前………【狗獣使い】か…?」 指名手配者である些原祐司が 警戒しながら問い掛けてきた。 そういえば目の前にいたんだっけ 忘れてた 俺は些原の連れている狗獣に目を向け、ピッと人差し指で指差した。 「そ。そんなに珍しくもないだろ?あんただって、そうなんだから」 「……どこのもんだ? 俺に手を出せば、お前の命…… 保証出来ねーぜ…?」 ん?と嫌らしい笑みを浮かべる些原。 俺はふっと笑い、俯いた。 「俺の名は綾鷹千里(アヤタカ センリ) よく覚えておけよ……… そして刻みつけろ 俺から受けた、恐怖を───」
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