もう一人の零員

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千里は些原の上に跨り、狂ったように拳を奮い続ける。 ふと、千里の拳が止まった そしてコートのポケットから ゆっくりとナイフを取り出した 「なぁ些原………狗獣ってすごいと思わねぇ……?」 ナイフをゆらゆらと動かし、 千里は喋り続ける 「普通じゃあり得ない事が普通に出来る……常識を越えた常識。 こんななっても、俺達は人間って言えるのかな……?」 自分の目の前にナイフを翳し、 何を思ったのか左手にナイフの刃を向けた そして 「なっ────!?」 自分の手を、貫いた 「……………っ」 一瞬、ほんの一瞬だけ千里は顔を歪めた 千里の手から、鮮血が垂り落ちる そして嫌な効果音とともに、貫通したナイフが引き抜かれた 千里はナイフについた血を眺め、クスリと笑い、言った 「ほんと………便利な体だよな……とても人間とは思えない」 そう呟いた千里の手を見てみれば、信じられない光景が目に飛び込んできた 俺は手を口に当て、驚愕した 「嘘……だろ…」 血が……飛び散った血が元に 戻っていく…… 貫かれた傷口に向かって 傷が  治っていく────…
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