もう一人の零員

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「狗獣使いを殺せるのは狗獣使いだけ………狗獣使いに、人間が造り出したものは利かない…」 「班長………」 班長は俺の隣で、絶望にも似た声で言葉を紡いだ。 千里の方を見てみれば、千里は 些原の首筋にナイフを押しあて、妖しく笑っていた 「これは罰なのかな……… 罪を犯した俺への……なぁ些原、この世で一番、辛い事を教えてやろうか……?」 首筋にナイフを滑らせる 些原はぴくりとも動かない 千里はゆっくりとした口調で 意識のない些原に言った 「一番辛い事はな……… 犯した罪に対して、何の罰もないことなんだよ ……時々不安になるんだ 月日とともに、 俺の罪が消えてしまいそうで…… 俺は一生……苦しんで生きていかなければならないのに 救われたい気持ちになる そんな気持ち、抱くことすら 許されないのに……」 千里の声に、力がなくなっていく 脱力したような、全てを投げ出したような声は、俺の気持ちを、どうしようもない不安で包んだ 「でも安心しろ」 千里はさっきとは全く違う声色で、はっきりと……そして寒気がするくらい冷たい声で言い放った 「お前は俺が救ってやる 俺がお前に     罰を与えてやる   」
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