もう一人の零員

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俺が唖然としている間も、千里は跪いたまま、紫呉様を連呼している。 その光景から目を離せずにいる俺に、班長が煙草を持った手を僅かに震わせながら言った。 「あいつの……いや、“あいつら”の能力は、己の言葉を聞いた者を意のままに操る…“言霊”だ」 「“言霊”…」 「声、二重に聞こえたろ?」 「あ………」 俺はさっきと今で聞いた紫呉姉さんの変わった声色を思い出した。 なんか…… 紫呉姉さん以外の声が重なって、ハモッたみたいになってた… 「ありゃ狗獣と重なった声だ。 狗獣と声を重ねた時、紫呉の放った言葉は言霊となる。 ただし、狗獣と少しでも意識が合わなかったら、ただの人間が喋った言葉だがな」 「ほ、ほぉ~……」 えっとー………つまり何だろ 「例えてみれば、俺とお前が 同時に同じ言葉を一文字の間違いもなく言えれば言霊完成、だ」 「ほーほー」 やっと納得した俺を見て、班長は呆れたようにため息をつき、千里たちに目を向けた。 俺も同じように目を向け、もう疲れ切っていてもまだ紫呉様を連呼する千里を見た。 「紫呉を怒らした狗獣使いは この世にいられなくなるような 醜態を晒されるだろう…」 「……………」 今目の前で実践されてます… 公衆の面前で土下座させられるとか……… プライドずたずただよ…… 「まぁ、これはまだマシだな」 ………………。
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