【狗獣】

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俺は物覚えが悪すぎる凪に呆れながらも、言った。 「狗獣を操るもの、通称【狗獣使い】と呼ばれる人間…。 そいつらは狗獣と言葉を交わせるとか。」 「狗獣使い、ですか……俺もなりたいなぁ」 凪のお馬鹿な発言を聞いた俺は 何とも言えない顔をして、少し俯いた。 「やめとけやめとけ。あんなもんなったって、ろくな事ねーよ。 “狗獣の声”が聞こえなきゃ、 狗獣は扱えねぇ。 “声”が聞こえない奴に、 “契約の資格”はねーんだよ。 それに……」 《──ピー、ガガ……班長、些原祐司の20m先に、狗獣らしき生命体を連れた少年が、些原に向かって真っ直ぐ近づいています》 少年……? 「……どんな奴だ」 《は……身長170前半、歳は17歳前後。髪は黒、少し癖のある短髪、フードの付いた黒のロングコートに、腕には複数のシルバーアクセサリーを着用。 狗獣と見られる生命体は、黒く、尻尾が二つで…》 「ちょっと待て……」 俺は部下の声を遮った。 俺の雰囲気の変化を感じた凪は、俺の顔を覗き込む。 だが俺の目に映るのは凪ではなく、指名手配者でもなく たた一人の、不思議なオーラを 漂わせる黒髪の少年だけだった 「……嘘だろ…?」 沢山の人間が行き交う中、俺の見つめる一点だけが、色づいて見える 動くものはみな遅く、己の鼓動がやけに大きく感じた 俺は、自分の延長線上に立っている少年から目を離すことなく、その少年の名を呼んだ 「千里(センリ)────…?」
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