0人が本棚に入れています
本棚に追加
闇の中に
◆ある少年の記憶
今日も兄ちゃんは夜に帰ってきた。どこか疲れた顔をしながら、僕に笑いかけてくれる。
朝に出ていって夜遅くに帰ってくる。お仕事だって分かっているけど、兄ちゃんと遊びたい。毎日、休みも無しで働いて、今にも倒れそうな兄ちゃんを見ているのが辛かった。
ある日、兄ちゃんがお仕事を休んだ。僕は嬉しくて、一日中兄ちゃんと遊んだ。
ある日、僕の体に白い斑点が出来た。それを見た兄ちゃんは泣きそうな声で大丈夫と僕に囁いてくれる。それから、しばらく兄ちゃんはお仕事を休んだ。僕はまた嬉しくなり、気持ち悪い斑点が増えれば、兄ちゃんと一緒に居れるのかな、と思った。
――咳が止まない。体が痛いよ。兄ちゃん、兄ちゃん、助けて……。
最初のコメントを投稿しよう!