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後部座席のドアを開き、そこで初めて男が喋った。
「極東会直系真田組組長真田謙吾だな…」
一瞬というのが適切な表現だろう。
組員を瞬く間に射殺された真田謙吾には首を縦に振る事しか出来ないでいる。
「…何故こうなったか理解出来ないと言った顔だな。」
男のその言葉に真田は首をまた縦に振る。
「極東会はここ数日で対立する組織に襲撃を無作為に仕掛け、その陰で何人もの罪無き人々が死んだ…」
真田は硬直した。
自分がある遺族の訴えを蔑み、嘲笑った事を思い出したのだ。
「思い出したみたいだな…遺族の方は泣きながら復讐を頼みにきた。お前を殺して欲しいってな」
男は右手に持つFN-Five-seveNの銃口を真田に向けた。
「待っ…」
「…死ね」
命乞いの言葉よりも先に男は撃った。
弾丸は真田の喉を撃ち抜いていた。
息を吸う度に弾丸よって開けられたら穴から空気が漏れる。
「…楽に殺す事も出来たが、そこで悔やみながら息絶えていけ」
真田は必死で血が溢れる喉を抑えた。
だが無駄な足掻きに過ぎなかった。
吸い込んでも空気は穴から流れ出て行く。
やがて真田は苦しみ抜いた上で死んで行く。
男は少しも真田に目を繰れる事もなく車から離れると煌々と照らすハイビームの先にある闇へと消えて行った。
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