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「ぅう…ん」
咲夜が目覚めたのは、レミリアのベッドの上だった。
「は、早く掃除に戻ろう」
誰に見られているでもなく、
ただこの部屋には居にくい。
それを理由に、
そそくさと部屋を出た。
この時引き止める主がいたら、
自分はどうするだろうか。
そんな事をぼんやり考えながら。
数日後、
咲夜はいつも通り、
人間離れしたスケジュールで
働き詰め。
「咲夜さん、お気をつけて!」
「貴方も寝たりしないでよ?」
買い出しのために咲夜は人里へと向かった。
門番の美鈴と挨拶を交わし、
歩みを進めて
紅魔館から遠ざかっていく。
必要なものを買い揃え、
戻ろうと踵を返した。
その時、レミリアに似た気配を感じた。
しかし明らかに違った。
長身の男で顔を見る限り若者。
整った顔立ちに振り向く者も珍しくない。
それは咲夜にとってどうでもいい事だった。
むしろ彼女が気にしていたのは、彼の本質的な部分。
「…気のせいよね」
自分の予想を打ち消しながら、
紅魔館を目指す。
ずっと彼は同じ方向を進んでいたため、後をつけている形だった。
不意に、彼が立ち止まったが咲夜は気にせず通り越す。
「紅魔館のメイド長、
十六夜咲夜。
時を操り、悪魔に遣える」
いきなりこんな事を呟いたその若者から距離をとり、
ナイフを構える。
「(またお嬢様を逆恨みして、
私に当たる下衆かしら…?)」
今まで何度かそういうことはあった。
バンパイアハンターや妖怪、
吸血鬼をよく思っていないものは幻想郷ではよくいる。
しかし、その力が強大すぎて、
彼女の従者である咲夜にぶつけるものは案外多い。
咲夜は買い物袋を消した。
空間制御で遠くに隠しただけではあるが。
「お帰りください下衆野郎様。
お嬢様はお出掛けにになられて
しばらく戻りません。」
「…それは好都合」
青年はニヤリと唇を歪めた。
「吸血鬼の居場所を吐いて貰う」
鮮血を思わせる真っ赤な刃の剣を腰から抜いた。
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