第一話 忘れられた罪

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「朱雀『南聖の大翼扇』」 いきなり発動された焔の津波。 咲夜はそれを飛んでかわす。 「いいのか?上で…」 津波は形を変えて、 花の蕾のように咲夜を下から 包み込むような形になって 競り上がってきた。 「そんなもの、 パチュリー様の魔法に比べれば 大したこと無いわ」 次の瞬間、咲夜が居たところには トランプだけが残って消えた。 同時に、青年の背後から 首にナイフを突きつけた。 「チェックメイトですわね」 「どうだか。」 青年は咲夜の手首を掴んだ。 同時に右腕全体が炎に包まれた。 「うあぁっ!?」 あまりの熱さに飛び退く。 相手の眉間に ナイフを刺すのを忘れずに。 青年の方も呻き声をあげた。 炎は手を離された瞬間に消えた。 しかし酷い火傷で右腕は使い物にならなくなった。 「う…くぅっ…」 熱さ、痛さにしゃがみこむ。 目にうっすら涙が浮かんだ。 「銀とは…皮肉だな。 吸血鬼のメイドが 弱点を持っているなんて」 蝙蝠が眉間に張り付き、 皮膚となった。 「やはり貴方は吸血鬼でしたか」 青くなった顔を向ける。 「メイド秘技『殺人ドール』」 大量のばらまかれたナイフは、 咲夜の魔力で相手に正確に飛ぶ。 「玄武『北の不動山』」 青年が地面を踏みしめると、 地面が盛り上がってナイフを全て受け止めてしまった。 「囮か…良い判断だ」 ナイフに紛れて咲夜は逃げてしまったようだ、 しかし、青年は何でもないと言いたげに溜め息をついて、 刃のような鋭い羽を持つ蝙蝠を 産み出した。 「さあ行け、 『サーヴェントフライヤー』。 あいつは殺さず捕まえてやる。 あいつも、苦しむだろう…」 使わなかった剣を鞘に納め、 青年は去っていった。 「くっ…パチュリー様に… 知らせないと…」 気にもたれつつ歩みを進める。 殺人ドールと時間操作の重ね掛けは流石に辛い。 右腕は痛さ以外の感覚がなくなり 足が震える。 それが恐怖なのか、疲労なのかは本人も分かっていない。 「見つけた…」 いきなり後ろに気配を感じ、 飛び退く。 しかし、一瞬間に合わなかった。 反対側の手も炭と化してしまう。 ナイフの使用もできず、 相手は吸血鬼。 その事実が恐怖と混乱を呼び、 隙を生んだ。 後退りし、転んでしまい、 右足も焼かれてしまった。 痛さのショックで気絶し、 地に這いつくばった。 「いくら強くても人間か… これで我が悲願も一歩前進…」 声を出さずに笑いながら、 咲夜を担いで何処かへ消えた。
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