春がきた

2/4
前へ
/7ページ
次へ
ばああんッ 「ヒロちゃんッ」 チャイムが鳴ってすぐ 彼は大きな音と共に やってくる 「あ、相さ」 「ほらっ、 ヒロちゃん早く!」 机の上に出された ノートやら筆箱をしまう 時間さえもくれず 相坂くんは俺の腕を 引っ張り教室の外へ 連れ出そうとする 「ちょ…待って!!」 「もー、何よ。 ひろちゃん、早く行こーよ」 「カバン! お弁当入ってる」 「あ、ごめん」 相坂くんは俺の手を 離さずにカバンを 片手で持ち、また俺を 引っ張りだした 校内1の問題児、 相坂 祐希は校内1 足が早い男でもある。 そんな彼に 引っ張られてる俺、 桜庭 ヒロは学年で 1、2を争うと言われる 運動……音痴、である。 「ちょ…ちょッ!! 相坂くん!早い早いっ」 「だいじょぶだいじょぶ!」 そんな俺が彼の 『だいじょぶ』に ついて行けるはずもなく 「なッ?!」 「わっ、ヒロちゃん?!」 こうして転んでしまうのは 何回目だったかな。 「ヒヒヒロちゃん?! だッだいじょぶ…?」 「あはは、 …だいじょーぶ」 床についた膝を 払い立ち上がると すぐ目の前には 相坂くんの心配そうな顔 毎度毎度彼は、 その顔をして俺に たくさんの謝罪をする 「ごめん、ごめんね? ヒロちゃん!」 毎度毎度なんだから そろそろ覚えてくれても いいんじゃないかと 思うんだけど、 それを言ったことは 1度だってない。 「本ッ当にごめん!」 「大丈夫だって。 心配し過ぎだよ」 彼が走るのは、 「…ごめんね。皆のとこ 早く行きたくて……」 「わかってるから。」 皆が大好きだから。 仲間と、なるべく 一緒にいたいという 彼の気持ち、 ちょっとそれが 先走り過ぎて、 周りが見えないだけ。 けど相坂くんは、 どんなに急いでいたって 俺と繋いだ手を離した ことは一度だってない  
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

86人が本棚に入れています
本棚に追加