春がきた

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まあ、手を離さない せいで痛い思いするのが 増えるんだけどさ。 「…歩ける?」 「大丈夫だよ、このくらい」 俺が少し笑っただけで 本当に安心したような顔をする 「よかった。じゃ、いこ」 彼はすごくいいひと なんかもっと別の言い方 があるんだろーけど… なんかこれしか 思い当たらない。 彼は、いいひとだ。 ぎゅ、 握っていた手は さっきより強く握られた けど走るんじゃなくて ゆっくり歩いてる 他愛もない話をしながら 時々爆笑をしながら ゆっくり、と。 それは俺が走ったことで 転んでしまったからであって 早く行きたい、 その思いを抑えての 相坂くんの優しさ そういう感情は もっていないけど もし俺が女の子なら 相坂くんみたいなひとを 好きになりたい 相坂くんみたいなひとに 好きになってもらいたい ばああああんッ 耳に響く鉄の音 開きが悪いからって 蹴飛ばすことはないん じゃないのかな、 蹴飛ばすことは。 「相坂さんとーじょーッ」 「うるさい、黙れ。 騒がしい、帰れ」 「ちょ、アリちゃあん…」 パラパラと手の中を 生き物のように動くトランプ それを自由自在に動かし 相坂くんの激しい登場にも 動じず、ポーカーフェイス を作り続けているアリ …本当、尊敬するよ 「ヒロくん、お疲れ」 「あ、ありがとう」 声をかけてくれた 詩音の横に座ると 詩音はふわっと笑った。 「ん?」 「ううん。なんでもない」 詩音はたまに、 すごく幸せそうな顔をする けどその理由は いつも教えてはくれない …まあ、怒ってるわけ じゃないから全然 いいんだけどさ。 「こらー、詩音ーッ!!」 「うぉッ?!」 急にぐいっと 引っ張られ温かいもの に包まれる感覚がした ふわ、と香った 柔らかい香水と洗剤の香り 「あ…相坂くん?」 「ヒロちゃんと ラブラブしちゃだめっ!!」 ヒロちゃんは俺のだよ?! 大きな声でとんでもない 発言をする相坂くん。 目の前の詩音も呆れ顔  
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