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今の自分が信じられない気分だ。
まだドキドキが抜けない内に堺くんは戻って来た。
「決まりましたよ!えっと…荒壱のヤツが…。」
決まった曲を順に教えていく堺くん。
わたしは手が震えそうになるのを必死でこらえた。
「と、以上っす。」
「はい。わかりました。……あ、あの…。練習!頑張ってくださいね!」
「はい!」
元気よく返事をすると、堺くんは右手を差し出した。
え…?
わたしは条件反射のように彼の手を握る。
しっかりと交わした握手。
そして彼はグラウンドに戻って行った。
ああ、もう。
この手の感触がとても熱い…。
わたしは決めた。
堺くんに思いを伝えると。
遥にもこのことは話した。
遥も好きな人に告白すると誓った。
そして…勝ち上がっていった夏の大会の決勝戦。
堺くんに告白する日。
でも。
思った通りになんて。
ならなかった。
堺くんは、野球部のマネージャーの香月さんと両想いになった。
その場を、遥が見てしまった。
そして、わたしは全てを理解してしまったのだ。
堺くんのこと。
遥の好きな人のこと。
自分の思いが、もう伝えられないこと。
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