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私と違い、桜が散ると二度と生界に戻って来れない彼。
桜に魅入られた彼に私は興味を持っていた。
去年はこの問題に関わる事を避けていたが、今年は違う。
私は変わろうと思った。
あの空のように。
いつまでも前の私でいるのはつまんないから。
吸い込まれるように私は彼の居る病棟へ入り、階段を駆け上がる。
私の体は疲れも痛みも感じない。
ただ、私は昔人間だったのだろうか、疲れや痛みが辛い事を知っている。
病室は3階の一番奥の部屋。
3階は彼の居る病室しかない。
そのため、この階に来るのは患者とその親族、医者や看護師くらいなもの。
ありふれた扉、しかし開けるのが躊躇われる。
私が覚えている中で、人に話し掛けるのは初めてだ。
なんて声をかけようか。
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