【1】覚醒

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「僕?」 彼は自分を指差し、私を見つめる。 「僕は優治、で、君は?」 「わ、私は……」 自分の名前がわからないなんて言ったら、普通は不審に思うだろう。 「えっと、その…… えー……」 言葉に詰まる。 普段からあまり人と会話しない私にとって、話す事がこんなに難しいとは思いもしなかった。 全部説明したい気持ちはあっても、口はついてこない。 「んじゃ、桜で」 「えっ……」 「嫌だった? いいあだ名だと思ったんだけどな」 彼はうーんっと唸って考え込んでいる。 恐らく私に付けるあだ名を考えているのだろう。 「桜、でいい」
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