プロローグ

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「よかったわね、ほんとに…… 一時はどうなるかと思ったけど……」 真っ白と言っても過言でないくらい綺麗に磨かれた廊下。 一人の女性と、その息子と思われる少年が並んで歩いている。 女性は安堵の表情を浮かべ、感極まって今にも泣き出しそうだった。 「優治、ほんとに体は大丈夫なの?」 「大丈夫だってば、母さん」 優治と呼ばれた少年は多少笑みを浮かべ答える。 「その桜の枝、まだ花が咲いてるのね……、なんか怖いわ、枝だけで2年間も――」 「怖くないよ」 自動ドアを通り抜け、優治は何ヶ月ぶりの日光を浴びる。 優治の左手に握られている小さく、細長い花瓶。 その中に入っている 桜の枝を優治は眺め、小さく微笑む。 「だって――」 一足先に外に出た優治とは違い、のんびりと歩いて来た母親の方へと振り向く。 「これは、俺の大切な人の一部だから」
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